*3GRAPH


#1 私性


#1 artist
キリコ
Kirico
http://moritasuzu.wix.com/kirico

1978年京都生まれ
2009年より写真・映像などを使った作品制作・発表を続けている
第32回キヤノン写真新世紀佳作(荒木経惟 選)
ミオ写真奨励賞2010入選
London International Creative Competition佳作(2015年)
近年の個展に「re collection」(2013/Port Gallery T)(2015/CROSSROAD GALLERY)

“ 2回目の愛 ”
88歳になる祖母は、娘である私の母を「おかあさん」と呼ぶ。
私は祖母と母の関係を出来るだけ客観的に観察することから、人の晩年において最も大切なことは何か、改めて思考を巡らせている。
他者に依存して生きている存在である高齢者や赤ちゃんにとって、依存することこそが生きることであり、未来への命綱を掴むことでもある。そういう意味で人は人との関係性なしには、生きることが出来ない動物なのかもしれない。
逆転した母娘は、いま2回目の関係性を築きあげているところのようだ。
そこにはこれまで積み重ねてきた記憶よりも、ただただ目の前にある些細な喜びと苦悩に満ちているようにも見えた。


ヨシダミナコ
Minako Yoshida
http://yoshidaminako.jimdo.com

1981年、兵庫県神戸市生まれ
日本写真映像専門学校卒業
2002年 キャノン写真新世紀 優秀賞(マルク・リブー選)
2005年 富士フォトサロン新人賞 奨励賞
2002年の初個展『向かうところ』(The Third Gallery Aya/大阪)以降、2007年までコンスタントに作品を発表
2016年、約九年振りに写真の活動を再開します。

“ 普通の日々 ”
絵描きの夫と一緒になって九年。
互いを大切に想えば想うほど、その瑞々しさはどこかへこぼれ落ちていくかのようで、結局は自分自身のためにあらゆるものを投げ打って、彼はたったひとりで目指すべきところへ向かうために闘っている。
そんなふうに制作に打ち込む彼の姿に、わたしはこれまで自分自身を投影してきたことに気がついた。
わたしも自分が目指すべきところは明確なはずなのに、長い間、迷い子のふりをしてきたのだ。
おかしな話だけれど、そうすることが彼と一緒にいられる方法だと思ってきた。
こんなわたしを許してくれるのは、こんな彼を許せるのは、互いに互いしかいない。そんなふうに思いながら。
ある時、彼はこう言っていた。
「リベリーが宇佐美に言ってたらしいよ。“味方を味方と思うなよ。仲間は家族だけ”って」
相変わらずサッカーの話ばかりで例えてくるけれど、それがいつもどこかわたしを安心させる。
わたしは、思う。
友達でもなく、恋人でもなく、夫婦でもなく、わたしは彼と家族になりたかったのだと。


#2 原理性


#2 artist
林 佑紀
Yuki Hayashi


1984年 生まれ、大阪在住
2009年〜2015年までgallery10:06(自主運営ギャラリー 大阪)に在籍
個展に、「Blitzkrieg Bop」(gallery10:06/2009年)
「suburb」 (gallery10:06/2010年)
「nation of city slave」(gallery10:06/2011年)
「untitled」(gallery10:06/2011年)
2013年 「carve gravity」(gallery RAVEN 東京)(gallery 10:06 大阪)(gallery CLASS 奈良)3都市巡回

“ 縁へ ”
それ自体に意味のある景色や、心的な印象に直接結びつく対象には関心がなく、日頃どこにでも見られる、意味を成さない事物の切片に、現実とは異なる位相を見出したい。
『青空がいきなりひろがり、その光を受けて、道の真中で一頭の牝牛が輝いた。これだけで何事かにならなくては物語ではない。』(ローベルト・ムージル)
言葉がほどけてしまう、そんな認識を喚起する場所へ。写真を介して切り取り、紡ぐ。

中澤 有基
Yuki Nakazawa
www.nakazawayuki.jp

1980年生まれ、京都市在住
2002年ビジュアルアーツ大阪卒
galleryMainを主宰するなどギャラリストとして活動しながら写真作品を発表
主な展示に『震える森、焦点の距離』(2013/gallery 9 kyoto)、『SAKURA010』(2013/galleryMain)、アートフェア『FOTOFEVER ARTFAIR PARIS 2014』(Carousel du Louvre)など


“ Relation, appropriate distance ”
角度や距離によってモノの見え方は変わり、関係も距離によって変容する。
関係とは、AとBで初めて成立し、距離もまた、AとBがあって成立する。
無関係な”何か”と”何か”が、写真の中で関係を結び、それ自らが新しく世界を始める。
そこには”視覚”と”認識”に対する問いかけがある。


#3 時間浸食


#3 artist
カワトウ
Kawatou

1983年宮崎県生まれ
プロフリーター
全くの無名、これといった受賞歴は無し
強いて言うなら保育園のマラソン大会での3位獲得、それくらい
2010年大阪産業大学大学院卒業
2012年写真表現大学本科修了
フリーのフォトタブロイド誌「Noiz」の発行や、インディーズ写真集レーベル「CITYRAT press」の立ち上げなど、大阪を拠点に活動。

“ Scat of Muhammmad ”
気付いた時にはもう遅かった。一瞬にして迫ってきた停車中のエスティマのリアガラス。木端微塵に砕け散るソレと愛車のCL400。顔面から一瞬にして吹き出す大量の真っ赤な血と、とてつもなく美しい秋空。鼻も口も私の顔面から旅立つことなく、味気ないこの脳ミソも破裂することなく、辛うじて一命は取り留めた。
アスファルトに横たわる惨めな吃音症のメキシコ人。白状をこれでもかと振り回しながら兎に角突き進む視覚障害者や、ボディクリームを塗りたくる乾燥肌のこの男も同じようなアメリカンドックを頬張っている。
東大卒のホモセクシャルも契約社員のバイセクシャルもセロリ好きの熟女マニアも藤田嗣治の乳白色の肌には敵わない。空梅雨の灼熱地獄で糞味噌に叩かれたキ・ソンヨン。オレンジ色のヘルメットに張られたモロッコ人の生ぬるい走り書きが私のくたびれた三段腹をこれでもかと締め付ける。

片岡 俊
Shun Kataoka

1984年京都生まれ
個展『Touch』(2010/id Gallery)
受賞歴『KAWABA NEW-NATURE PHOTO AWARD 2014 グランプリ』(2014)
現在京都在住。




“ 吸水 ”
偶然雨がよく降る数日に遭遇し、昼夜問わずに写真を撮った。
日が暮れるとともに覆い被さるように広がる深い闇は、ただの暗さではなく、少し道を逸れると背筋が寒くなるような、黒々とした闇だった。
群馬県の山中にある一つの村での日々。近県の川を氾濫させるほどの水量を記録した雨は、道を濡らし、川の姿を変え、川岸に様々な物を運ぶ雨となった。写真を撮るには難しい状況ながら、昼夜問わず歩きながら写真を撮る体験は、その場所の空気を感じるだけではなく、天候や気候、目に見えないものまでが身体に沁み込むような体験だった。
自然とは、ずっと近くにあるが故に薄まってもいる。意識をしていなかった当たり前の自然。雨が降り、雨が乗り、植物は暗がりに首を垂れていた。水は岩を撫でながら、下流へ向けて滑っていた。
闇と水分。そのどちらもが場所に浸透していた。