CHINO ART PROJECT

Date 2022.11.8 - 11.27
さよなら△またきて□ 乳野の里芸術展
さよなら△またきて□ 乳野の里芸術展
展覧会開催にあたりキュレーターを担当したgalleryMainの山崎 裕貴を中心に、10組の若手アーティスト、浅田 優月 / MANAMI ARIGA / 中村 幹史 / 松本 悠 / 吉田 晴彦 / リュ・ジェユン / 松岡 湧紀 / モノ・シャカ / 平岡 真生と会場となった家財が残る廃家や乳野に伝わる信仰を探り、数10年も時間が止まった家を掃除し会場をつくるところ始まりました。
比叡山と琵琶湖、
生者と死者、
伝承と忘却。
狭間から生まれる
新しい死生観

展覧会ステートメント
本展は滋賀県大津市千野を舞台としたアートプロジェクトです。
乳野(ちの)とも呼ばれるこの里には、およそ1000年にわたり、母と子を強く結びつける母子信仰が息づいてきました。それを支えてきたのが延暦寺中興の祖・元三大師と、その母・月子姫を祀る安養院妙見堂です。
もともとこの寺院の場所には、元三大師が月子姫のために建てた庵がありました。平安初期の天暦9年(955年)、元三大師が44歳、月子姫が70歳のときに開創された安養院という名の庵です。
そして元三大師は夜ごとに叡山の女人結界を越え、月子姫のもとに通ったといいます。それを子が母に乳をもらう様子に見立てたことが乳野という名の由来です。
安養院を終の住処とした月子姫は、康保3年(966年)に同地に埋葬され、廟所妙見堂が建立されました。毎年7月6日には千野の住民と延暦寺の僧侶による月子姫の法要が執り行われています。
いまから約70年ほど前、乳野の伝承に新しい視点を加えた作家がいます。
小説家の谷崎潤一郎です。谷崎は昭和26年に『乳野物語––––元三大師の母』という随筆を雑誌『心』に発表しました。谷崎は同作のなかで月子姫が嫁いだ先の饗場(あいば)家が所蔵する口上書を引きながら、彼女の第一子で元三大師の兄にあたる「弥世丸(みよまる)」について短く触れています。弥世丸は母の傍らで記憶されることも、寺院に祀られることもなかったため、乳野の伝承には存在していません。谷崎はこの弥世丸の存在が、逆説的に乳野に伝わる母子愛の強さを物語っていると捉えました。
本展の企画にあたり千野の住民の方にも月子姫のもうひとりの子供について尋ねて回りましたが、その存在を認知しているひとはいないようでした。
どうやら弥世丸は、よそ者の前にだけ、その姿を現すようです。
本展は谷崎とは異なる視点から弥世丸に着目します。
弥世丸は乳野から見れば、よそ者のような存在です。母との強い結びつきがなく、誤解を恐れずにいえば、母子共依存的な関係の外にいます。とはいえ彼は月子姫のもうひとりの子供であり、よそ者よりも乳野の伝承に近い存在でもあります。
乳野とよそ者、記憶と忘却。このふたつが重なるところにだけ現れる弥世丸は、乳野に関係しながらも、乳野の記憶には縛られない性格をもった死者です。
そのため本展では、乳野とよそ者のあいだの架け橋として弥世丸を捉え、「弥世丸の家」という会場を作りました。
「弥世丸の家」は安養院妙見堂のすぐ裏手にたたずむ一軒の廃家です。家のなかには10組のアーティストの作品を展示しました。
観客のみなさまを乳野の記憶へ、そして母子愛には縛られない死者と生者の連なりへと、弥世丸が導きます。
生者が死者を審く時代とは逆行した展覧会をお楽しみください。
山崎 裕貴 / キュレーター
展覧会の3Dアーカイブ
https://my.matterport.com/show/?m=6cAfWx8ATuS
展覧会概要
乳野の里芸術展「さよなら△またきて□」
キュレーター
山崎 裕貴(美術家・合同会社galleryMain)
アーティスト
浅田 優月、MANAMI ARIGA、中村 幹史、松本 悠、吉田 晴彦、リュ・ジェユン、松岡 湧紀、モノ・シャカ、山崎 裕貴、平岡 真生
会期|2022年11月8日(火)〜11月27日(日)
休館日|月曜日休み
開館時間|10:30-17:30
会場|千野の古民家「弥世丸(みよまる)の家」、番屋勇気
住所|〒520-0111 滋賀県大津市千野1丁目7−43
入場料|1000円
アクセス|JRおごと温泉駅より徒歩25分、タクシー5分
主催|合同会社galleryMain
共催|近江おごとハーブガーデン
後援|大津市、大津市教育委員会
協力|月子茶屋、三橋節子美術館
助成|「ARTS for the future! 2」補助対象事業
「さよなら△またきて□」乳野の里芸術展電子図録販売中
https://gallerymain.stores.jp/items/650f29a782808c1947b5e977
◎内容|56P 会場写真・作品ステートメント・振り返り座談会(一部抜粋)
主催|合同会社 galleryMain
共催|近江おごとハーブガーデン
後援|大津市、大津市教育委員会
協力|月子茶屋、三橋節子美術館
助成|「ARTS for the future! 2」補助対象事業
スペシャルサンクス|CAMPFIRE に支援いただいた皆様
乳野の里芸術展「さよなら△またきて□」図録
発行|2023 年 9 月 20 日
編集・発行|合同会社 galleryMain
写真|中澤有基
*タイトルの「さよなら△またきて□」のタイポグラフィは三橋節子「なくなる7時間前に書かれた 子供への最後のはがき」(1975年2月)より。三橋節子美術館蔵
