萩原朔美×三宅章介 展|HAGIWARA Sakumi × MIYAKE Akiyoshi Exhibition
2021/9/18 (Sat.) - 10/3 (sun.)
Closed: mon.
13:00-19:00
◆ 会場
LUMEN gallery + gallery Main
◆ キュレーター Curator
佐藤守弘|Morihiro Satow
萩原朔美と三宅章介が街で出会ったモノたちは、撮影されて写真という形態になり、分類・選別され、同じ機能を持つ仲間たちのイメージと並べられる。それが可能なのは、写真が、外部の世界に反射した光をカメラのなかに導き入れ、その光の痕跡を化学的あるいは電子的に固定することで、モノをもともとの空間や時間から引き剥がし、新たな文脈に自由に配置することができる技術だからである。それらのモノは、同じ機能を持つがゆえに、単独で見ると同じような形態に見えるが、それらが並列されるとそれぞれに個性があることが分かる。すなわち反復させられることで差異が浮き彫りにされるのである。本展「反復と差異」では、二つの会場で展示される二人の作家の写真作品、映像作品、インスタレーション作品を通して、二人の〈目〉が路上で見出したモノが、それぞれの布置のなかで、どのように新しい貌を見せるのかを追求したいと考えている。
類型学(Typology)とは、B&H・ベッヒャーによる一定の「タイプ」の——すなわち給水塔、サイロなど特定の用途とそれに由来する形態を持つ——建造物を多数撮影した作品のコンセプトを指す言葉である。個々では画一的にも見える建造物は、グリッド状に並べられることによってその多様性を顕にするようになる。シリーズのタイトルに「類型学」を掲げる三宅章介はもとより、萩原朔美の写真作品にもそのようなアプローチは見てとれる。
遡ると19世紀の民族学者たちは、ある民族を観察し測定することで民族固有の形質を見出そうとした。それこそが「タイプ」と呼ばれたものであり、その際に役立てられたのが写真であった。また美術史において、ある時代のある地域で制作された作品に共通する様式を抽出する際にも、写真による比較は欠かせないものであった。写真はそもそも類型学と深いつながりがあったのである。
ただし、かつての民族学者も美術史家も切り捨ててきた差異を浮かび上がらせてしまうのがベッヒャー以降の類型学である。それは写真という技術が時間と空間からその痕跡を剥ぎとり、移動させてしまうことに由来する。萩原が追い求める街灯、階段、観覧車やカラーコーン、ドアスコープから見た世界、さらには自らの影も、三宅が蒐集するかつてあった家の痕跡も、写真術によってひき剥がされ、他所に並置されることで、驚くほどの多様性をもって私たちに提示される。
そのまなざしは客観性を持ったものに見えるかもしれない。しかしそれらをつなぐ見えないハブには、間違いなく二人の芸術家が存在するのである。
寺山修司主宰演劇実験室・天井桟敷役者、演出家 / パルコ出版月刊「ビックリハウス)編集長 / 映像作家前橋文学館館長 / 多摩美術大学名誉教授
1946 東京生まれ
1966 日本大学芸術学部文芸学科中退
1971 FORUM POUR UNE AVANTGARDE(アテネフランセ文化センター) / ビデオコミュニケーション(ソニービル) / 第14回セント・ジュード・招待ビデオ・ショー(カルフォルニア・デ・サセー画廊) / 萩原朔美カレンダー展(JUNアートギャラリー)
1975 ビデオ・アート展(ペンシルベニア大学) 東京展 映像部門 100フィートフィルムフェスティバル(東京都美術館)
1976 第10回東京国際版画ビエンナーレ(国立近代美術館)
1976 萩原朔美展 PASSING THROUGH-写真とビデオとシルクスクリーン(ギャルリーワタリ)
1977 現代美術の鳥瞰展(京都国立近代美術館)
1979 第11回東京国際版画ビエンナーレ(国立近代美術館) / リュビリアナ国際版画ビエンナーレ(リュブリアナ近代美術館)
1982 シドニー・ビエンナレーレ(シドニー) 日本のビデオ・アート メルボルン (George Paton gallery他)
1987 日本実験映画の歴史展(パリ・ポンピドーセンター) / イメージフォーラムフェスティバル
1987 西武シードホール
1994 戦後日本の前衛美術(横浜美術館) / 日本実験映画40年史(キリンプラザ大阪) / イメージフォーラムフェスティバル
1994 西武シードホール 第40回オーバーハウゼン国際短編映画祭特集「日本の短編映画の会期」(ドイツ オーバーハウゼン) Japanese Art After 1945:Scream Against the Sky
1995 現代美術の流れ(東京都現代美術館)
1997 オーバーハウゼン国際短編映画祭(ドイツ オーバーハウゼン)
2002 長岡現代美術館賞回顧展
1964-1968 新潟近代美術館 / ポラロイドの世界-時を超えて- / ポラロイドギャラリー
2008-09 さよならポラロイド(ART SPACE煌翔)
2009 写真の時間 (新宿眼科画廊)
2013-18 イメージフォーラムフェスティバル
2013-18 シアターイメージフォーラム
- 著者
「時間を生け捕る」「思い出の中の寺山修司」「定点観測」「劇的人生こそ真実」「砂場の街のガリバー」「毎日が冒険」「ライフスタイル」「天使の声」「赤い自転車」「死んだら何を書いてもいいわ」「どこへと聞かれて」「天井桟敷の人々」「月明かりの窓」他
フォトグラファー、メディアアーティスト 京都嵯峨芸術大学名誉教授
1950 神戸市生まれ
1976 京都市立芸術大学美術専攻科デザイン専攻 修了
1974,75,77,79,80,81,83,88 個展(信濃橋画廊,ギャラリー16他)
1974 大阪府民ギャラリー開館記念美術コンクール 大阪府民ギャラリー
1979 実験―34人の方法と展開(京都市美術館)
1982 第3回日本グラフィック展B部門
1989 ’89 JPS(日本写真家協会)展(東京都美術館)
1996 第7回浜松市美術館版画大賞展(浜松市美術館)
1997 第5回プリンツ21グランプリ展(準グランプリ) / 日本ビジュアルアート展JACAグランプリ’97(フジタヴァンテミュージアム) / 大阪トリエンナーレ1997-版画(大阪府立現代美術センター) / ‘98京都美術工芸展(京都文化博物館)優秀賞
1998 第12回現代版画コンククール(大阪府立現代美術センター) / 第13回現代日本絵画展(宇部市文化会館)佳作賞 / あおもり版画大賞(青森市民美術展示館) / ’98ABC美術コンクール(大阪・ABCギャラリー)
1999 第4回高知国際版画トリエンナーレ(いの紙の博物館) / 第28回現代日本美術展(東京都美術館)
1999京展 京都市美術館(京展賞)
2000 JACA’99日本ビジュアルアート展(フジタヴァンテミュージアム) / 第13回現代版画コンクール(大阪府立現代美術センター) / 第5回さっぽろ国際版画ビエンナーレ / 北海道近代美術館 スポンサー賞 / クラコウ国際版画トリエンナーレ2000(ポーランド・クラコウ)
2001 第11回吉原治良賞美術コンクール(大阪府立現代美術センター) / あおもり版画トリエンナーレ2001(青森市民美術展示館)
2002 第17回京都芸術祭国際交流総合展(京都市美術館別館)中国総領事館賞 / 第3回池田満寿夫記念芸術賞展
2005 第4回東京国際ミニプリントトリエンナーレ 多摩美術大学附属博物館
2017 三宅章介 × 藤本秀樹/
1973→2017 京都嵯峨芸術大学附属ギャラリー
2017,18,19,20 京都写真展 (GALLERY MARONIE)
2018,19,20 切妻屋根の痕跡のための類型学I,II,II(KG+/LUMEN gallery)
- 写真集
「切妻屋根の痕跡のための類型学」 赤々舎