Exhibition

©️kawatou

“MY KING IS ANALOG AGITATION”

カワトウ 個展|Kawatou solo exhibition

2020/12/28 (mon.) - 2021/1/11 (mon.)
13:00-19:00
Close: 12/31, 1/4, 1/5, 1/6
*元日営業しています。

Exhibition contents

カワトウによる写真展。デジタル化(中判デジタル)したカワトウの写真は、眼差しはそのままに、解像度だけが上がっていく。どこまでも見えてくる細部が、カワトウを眼差し返す。会期中にはトークイベントの配信なども予定。

Statement

底抜けに眩しい。幹線道路沿いのファストフード店で萎びたナゲットを鷲掴みで頬張る姥桜。やつれたショッピングバッグに大量の日用品を詰め込み、どこか満足気だった。郊外のボウリング場で熱中する養親子は、奇跡的なスプリットメイクの成功に歓喜していたが、ハイタッチだけは少しだけ躊躇したように見えた。見捨てられたニュータウンを徘徊する紳士は、今日もいつもの場所で詩的な奇声をあげていた。そして私はそれらの残酷で美しい世界との邂逅に喜んだ。深夜ラジオから流れてくるサンズ・オブ・ケメットのチューバの旋律に夢中になっていると、遥か彼方でホバリングしていた天邪鬼な緊急車両は泡沫のように消えてしまった。青く、清く、穏やかな最期だった。据え膳には見向きもせず、脳裏に焼き付いた牧歌的な風景を追い求め、熟れたザクロの香りを頼りにただただ歩いていた。柔和な光で溢れた暗闇に面食らった瞬間、前方を優雅に走っていたカビだらけのブルーバードが白煙を上げながら横転した。大量に注入したステロイドのせいか、恍惚としていた不安が一気に蘇った。染み出る下心を隠し切れず、革新を煙に巻き、生温い簡易ベッドに飛び込むのが私の悪い癖だった。小気味良い冬のリズムは補正されたファクターを僅かに狂わせ、自然解凍されたインスリンは狼狽したポピュリズムの延命に躍起になっていた。グレガー・マグレガーを崇拝している灯台守は相も変わらず希望で満ち溢れた一瞬を感光していた。女衒が置き忘れた母国語に魘され、1時間起きに目覚めることがここ数日続いている。夢の続きを追い求める華奢なアナログ時計は、私の枕元でいつも何かに共鳴していた。ブルーライトの影響を大きく受けたのか、至るところに出没した張りぼての蕁麻疹が我が物顔で全身を駆け巡っていた。「真実の向こう側に必ず不都合な真実が潜在している」が口癖の共産主義者の戯言は心地よく、付和雷同を否定し、逆流性食道炎を患った極右勢力のネガティブキャンペーンにはウンザリしていた。取り留めのない耳垢で塞がれた鼓膜の奥で、何とも形容しがたいクリッキング音が艶やかな日常を強引に扇動していた。明晰で前向きな私が、キンキンに冷えて凝固したミルクバターシェイクを片手に、よそ行きのフィジカルディスタンスを保ちながら人目をはばかることなく喚いていた。迫りゆく寒冷前線に一縷の望みを抱いた二足歩行のモモンガは、縊死を企て、正夢を浮遊する中で手に入れた可愛げのない自信を今にも打ち砕こうとしていた。品質維持だけを目的としたデジタルデータを何百回も上書きし、全てを受け入れることが出来なくなった13年前、現実が確実に始まった気がした。最上階のアトリエの勝手口に無数に張られたクレームに耳を傾けることなく、ハイソで空っぽな文化人を愚弄し、ぐっしょりと濡れた陰部のような写真をおぼろげに弄りながら、マスターベーションに勤しむ日々だったことだけは今でもはっきりと記憶している。感傷的な眼差しをその淡い太股に突き刺し、眩いばかりのフラストレーションは辺りを這いつくばり、きめ細かな瞬きと共に著しく衰弱した夜空に解き放たれた。報われることのない都市の淀みに四六時中怯えながら必死に抗ってきた彼女は、「答えはあなたの滑稽な常識の外側で浮遊している」と固唾を飲んで言い残し、甘ったるいフォアグラを流し込むのが日常だった。もぬけの殻のタブロイド、噛み切れないユートピア、いきり立ったリフレクション、その全てが絶対に私だった。仰々しくそびえ立つ老舗百貨店から意気揚々と飛び出してきた青二才が指さす先には、知るはずもないアジア人の邪な仏頂面と着膨れした偏見を身にまとったフェミニスト。無垢で唐突な純粋培養で育まれたフロンティアを目指しながら、得体の知れない錆び付いたアンケラソは一心不乱に突き進んでいた。すると突然、季節が廻った。朦朧とした意識の中、闇雲にザッピングし、能天気なワイドショーの中へ潜水すると、軽やかで退屈な結末は動揺することなく淡々と牙を剥いて迫ってきた。そこには感傷的な夢物語も存在すらしていなかった。簡素で残酷なレトルト食品のバイキングに舌鼓を打ちながら絶望に絶望し、溶けかけのチョコミントパンケーキがこの不埒な思惑をより鮮やかなステージへと連れ出してくれるだろう。黄ばんだ悪趣味なマスクの隙間から垣間見えるピンサロ嬢の知性に富んだ唐人の寝言だけが唯一の生き甲斐だった。こめかみに流れる衝動や腰椎を圧迫する劣等感、生理的なサンライズですら同じようにこの一瞬にしか成立しえないのだ。幾度となく測られる鈍った体温は寛解した自己の同一性を否定し、けたたましい花鳥風月へとその姿を変えていく。高血圧のハロビロカマキリが複雑に絡み合い、増々活気づいていく奇天烈な事象を横目に、誰かが残した屈託のないテキーラを活気づいた胃袋へ流し込む。そして、膨大に蓄積された現象の虜になっていく自分の愚かさに嫌気がさす日はいつになるのだろうか。分厚い暗幕により全てのコンテンツが遮光され、隠蔽された射幸心が疼けば、再領有された高尚なピクセルが湿気を含んだイメージを覆いつくす。ケミカルなトレンチコートを身にまとった無口なムハンマドは、抗菌仕様のノスタルジーに心躍らせ、懐疑的なスキャットを口ずさみながら、未曾有のワンダーランドへと傍若無人なレイシスト達を導いていく。一級品の半角カナは徹底的にブラッシュアップを繰り返し、疲弊したエビデンスをこれ見よがしに翻弄し破壊していく。こぬか雨のその先から姿を表したコンシェルジュが北北西に向かって旅支度をしている遊牧民を恨めしそうに眺めている。過剰な接続により摩耗されたインターネットは饗応を受けることなく、咀嚼された傲慢な贖罪を吐き出し続けることで自我を保っていた。無数に存在する放置されたヴォイドは、刹那を彩り、ぬか喜びに狂乱する場所でもなく、誰の目にも触れずに死んでいく時間の集積と言ってもいいだろう。好奇心で満ち溢れたジョン・マクレーンのベレッタM92により呆気なく葬られていくテロリストの人生も、波乱に満ちた壮大でドラマティックなものだったかもしれない。行きつく先に何も無いことは勿論分かっていた。例え、好都合な解像度により全てが白日の下にさらせれ、不可逆的な希死念慮に襲われたとしても、それでも不確定で不透明な何かに触れてみたかった。そして、光景に目を奪われた。

Artist profile

カワトウ | Kawatou

1983年宮崎県生まれ。本職はキャラクター雑貨のセールスマン、課長。全くの無名、これといった受賞歴は無し。2010年大阪産業大学大学院卒業。2012年写真表現大学本科修了。大阪を拠点に活動。主な個展に「KEIHANSHIN FRONTIRE ZAPPING」(Port Gallery T)、「Chocomint Pink Salon」(galleryMain)など。

1983 Born in Miyazaki, Japan
2006 Graduated from Osaka Sangyou University, Osaka, Japan
2010 Graduated from Osaka Sangyou University Graduate School, Osaka, Japan

– 主な個展
2013「REFLECTION」10:06gallery(大阪)
2014「KEIHANSHIN FRONTIRE ZAPPING」Port Gallery T(大阪)
2015「Chocomint Pink Salon」The White(東京)
2015「Chocomint Pink Salon」galleryMain(京都)
2016「Scat of Muhammad」galleryMain(京都)
2016「Setouchi Tequila Sunrise」MARÜTE GALLERY (香川)
2018「 foie gras」」galleryMain(京都)
2018「Setouchi Tequila Sunrise」galleryMain(京都)
2019「逆流性食道炎」galleryMain(京都)

– 主なグループ展
2012「第三回ディベロッピング展」海岸通りギャラリーCASO(大阪)
2013「第四回ディベロッピング展」海岸通りギャラリーCASO(大阪)
2014「81lab×CITYRATpress」心斎橋アセンスギャラリー(大阪)
2016「showcase #5 “偶然を拾う- Serendipity”」eNarts(京都)
2017「CITYRAT press. Photo Exhibition」PLACE M(東京)
2017「写ルンです、か?」galleryMain(京都)

– 展評
2014 http://wapoc.net/archives/71
写真ユニット「WaPoC」連載記事
2014 http://artscape.jp/report/review/10097745_1735.html
artscapeレビュー

– 出版
2014「KEIHANSHIN FRONTIRE ZAPPING」CITYRAT press

– Selected Solo Exhibitions
2019 Reflux esophagitis,galleryMain,Kyoto
2018 Setouchi Tequila Sunrise, galleryMain,Kyoto
2018 foie gras,galleryMain,Kyoto
2016 Setouchi Tequila Sunrise,MARÜTE GALLERY,Kagawa
2016 Scat of Muhammad,galleryMain,Kyoto
2015 Chocomint Pink Salon,galleryMain,Kyoto
2015 Chocomint Pink Salon, The White, Tokyo
2014 KEIHANSHIN FRONTIRE ZAPPING, Port Gallery T, Osaka
2013 REFLECTION, 10:06gallery, Osaka

– Selected Group Exhibitions
2017 Utsurundesuka?, galleryMain,Kyoto
2017 CITYRAT press. Photo Exhibition,PLACE M,Tokyo
2016 showcase #5 “Serendipity” ,eNarts,Kyoto
2014 81lab×CITYRATpress,Shinsaibashi Athens gallery,Osaka
2013 Developing Exhibition vol.4, Kaigan-dori Gallery CASO, Osaka
2012 Developing Exhibition vol.3, Kaigan-dori Gallery CASO, Osaka

– Publications
2014 KEIHANSHIN FRONTIRE ZAPPING,CITYRAT press