実家には30年前に亡くなった祖父の陶芸作品が1000個近く眠っている。
それが実家を離れて以来ずっと気になっていた。私が小学校3年の頃に亡くなった祖父だが、どれだけわがままを言っても怒られた記憶は一度もなく、穏やかなひとだった。
祖父が亡くなってからずいぶん後、父や母から祖父のことを聞くと、記憶にある姿とは重ならないところも多く浮かび上がってきた。
どういう人だったのかもっと知りたくなった。できるなら会って話したい。
そこで私は祖父の器を持ち帰り茶碗の底に穴を開け、そこに植物を植えることにした。
様々な形状の植物は、よく見ると体の一部のようである。祖父が土から形作った器に土を盛り、体の断片を育て祖父と再開する。
自らの体を素材としてきたダンサーの増田美佳が、「隔たり・不在」をテーマに作品制作を行う初個展。
1983年京都生まれ。ダンサー/文筆家。
これまでに演劇、ダンス問わずさまざまな作品に出演する。近年はジャンル横断的に活動する流動ユニットmimacul(ミマカル)を主宰し、主に舞台作品を手掛ける。
また文筆家、嵯峨実果子としても活動。『ミことば』で平成27年度第33回世田谷文学賞 詩部門受賞。301句会所属。京都市立芸術大学非常勤講師。