Exhibition

©yumikoizu
©yumikoizu
©yumikoizu
©yumikoizu

“Saul Leiter: In Stillness”

井津由美子 写真展|Yumiko Izu solo exhibition

2021/3/10 (wed.) - /3/21 (sun.)
Closed: mon. tue.
13:00-19:00
*最終日は17:00まで

◆ 協力
ソール・ライター財団、リブロアルテ(『Saul Leiter: In Stillness』刊)、佐藤正子(コンタクト/『永遠のソール・ライター展』企画制作)、大野留美((株)テレビマンユニオン/映画『写真家ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと』配給)、おおうちおさむ(ナノナノグラフィック/『Saul Leiter in Stillness』装丁)

同時期開催
・美術館「えき」KYOTO
写真展『永遠のソール・ライター』(会期:2/13-3/28)
https://kyoto.wjr-isetan.co.jp/museum/exhibition_2103.html
・京都シネマ
映画『写真家ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと』(会期:3/5-3/11)
https://www.kyotocinema.jp/movie/8206/

写真集
『Saul Leiter: In Stillness』 リブロアルテ
http://www.libroarte.jp/

Exhibition contents

井津由美子写真展『Saul Leiter: In Stillness』を開催いたします。ソール・ライターと親交のあった井津由美子が、2013年に逝去した後にソール・ライターのアトリエを撮影した今作は、イーストヴィレッジにある彼の仕事場や住居空間や中庭など、ソウル・ライターが愛おしんだ場所や遺品を通して彼の人生を辿るプロジェクトとなっております。会場では同名写真集(リブロアルテ刊)も販売しています。
同時期開催の”美術館「えき」KYOTO 『永遠のソール・ライター』(2/13-3/28)” ”京都シネマ 『写真家ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと』(3/5-3/11)” など合わせてご覧いただける連動企画となっております。

Statement

ソール・ライターに初めて私が出会ったのは、ニューヨークのハワード・グリーンバーグギャラリーのキッチンだった。土曜日には必ずベーグルが置いてあるそのキッチンに、彼は日頃からよく遊びに来ていたようだ。ソールからアパートメントに遊びにきたらどうかと誘われた私は、彼の作品に強く惹かれていたこともあり、招待に快く応じた。ソール・ライターの魅惑的で創造性に満ちた場所に、この後何度も訪れることになるとは、その時の私にはまだ知る由もなかった。

ソールのイーストヴィレッジのアトリエ兼アパートメントを訪れる度に、楽しくインスピレーションに溢れる時間を彼と一緒に過ごした。私たちは、アートプロジェクトや昨今に起きた様々な事件、古い浮世絵のこと、猫のことなどを語り合った。笑みをたたえたやさしい眼差し、ウイットに富んだ会話、コーヒーの香り、部屋には物があふれていて、そこに空からの光が降り注いでいた様子を思い出す。

ソールの人生のパートナーで画家でもあったソームズ・バントリーは、その頃にはすでに他界していた。ソールとソームズは半世紀近い時間をこのアパートメントで一緒に過ごした。このふたりの芸術家の歴史が、ひび割れた天井の壁のひだに、うず高く積まれた絵とコラージュの間に、散らばったフィルムとホコリを被ったプリントに、ひっそりと染み込んでいるようだった。1946年、ソール・ライターはユダヤ教神学の勉強を打ち切り、ニューヨークに移った。当時22歳だったソールは、世界的に著名なユダヤ神学者だった父親の意志に背いて画家になる夢を選んだ。1952年にイースト・テンスストリートに移って以来、半世紀以上をこのアパートメントで過ごし、2013年の11月26日に馴れ親しんだこの場所から安らかに旅立った。

ソール・ライターが亡くなった3週間後に、ソール・ライター財団からの許可を得た私はアパートメントを撮影した。すべてはソールが生きていた頃と何ひとつ変わらない様子で、生前の状態のままに保たれていた。そこには深い静寂に満ちていたが、ふとした瞬間にソールの気配を感じることがあった。窓辺に置かれたペインティングの道具、棚の中のカメラ、椅子に掛けられた帽子やマフラーは、主人が戻って来て使われるのを待っているかのようだった。

それから5年後の2018年から2019年にかけて、ソールの残した遺品を、ソール・ライター財団の全面的な協力を得て再び撮影することになった。写真家であり画家であり詩人でもあったソールは、膨大な数のものを残した。カメラとプリントとスライドと未現像フィルム。油絵と水彩画とスケッチブック。時計と手紙と詩。書物とユダヤ聖典。日本製の藁のブラシと鍵。ソール・ライターが生前に愛したものたちは、彼のアーティストとしての私的な人生を教えてくれる。ソームズへの敬愛を、両親への悲哀を、妹への苦悩を、密やかに暗示する。

『Saul Leiter : In Stillness』はイーストヴィレッジにある彼の仕事場や住居空間や中庭、彼が愛おしみ大事にしてきた遺品を通して、ソール・ライターの人生を辿るプロジェクトだ。ソールは煉瓦造りの建物が並ぶ数ブロックの狭いエリアで、彼の周りに存在するたくさんの美しいものを見出した。「神秘的なことは、身近な場所で起きる」という彼の言葉をそのまま体現するかのように。この作品を通して、謎が多いソール・ライターの人生に、新たな光を当てることができれば幸いだ。

Artist profile

井津由美子(いづ・ゆみこ) | Yumiko Izu

1968年大阪府生まれ。ニューヨーク在住。1998年アメリカ、カリフォルニア州のブルックス大学写真学科を卒業後、ニューヨークで広告写真から写真家のキャリアをスタート。2003年より8x10インチと11x14インチの大型カメラでプラチナ・パラディウムプリント技法による『Secret Garden』シリーズを制作開始。2016年に『Secret Garden』と『Faraway』を収録した写真集『Resonance』がSerindia Contemporaryより出版。2017年から2018年にかけて、微細な鳥の巣と羽根の抽象的イメージで成り立つ『Icarus』シリーズを東京、台北、バンコク、サンタフェ、パリのギャラリーで発表。2020年1月に東京のBunkamuraザ・ミュージアムで開催された『永遠のソール・ライター』展において上映されたプロジェクションに作品を提供。2020年6月に、ニューヨーク発ファッションブランド「マーク ジェイコブス」が手掛けるブックストア、東京の『BOOKMARC(ブックマーク)』にて、故ソール・ライターのアトリエの写真集『Saul Leiter: In Stillness』の出版を記念して写真展が開催される。2007年にニューヨーク州ウッドストックのセンター・フォー・フォトグラフィー奨学金受賞、サミュエル・ドースキー美術館に作品が収蔵される。